駆け込み訴え

ジャニヲタ腐女子の観劇メモ

グレートギャツビー

 
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5月9日、グレートギャツビーを見てきました。

まず井上芳雄さんの圧倒的魅力!!!歌がうまい躍りがうまい立ち姿が颯爽としている。田代万里生さんのニックはいかにもいいひとそうでかわいかった……。トムブキャナンを演じる広瀬さんはもうトムそのまま!嫌なやつなのに自信満々で力強いところに惹かれてしまう。夢咲さんのデイジーは可憐で愛らしく、あかねさんのジョーダンはミステリアスでかっこよく、蒼乃さんのマートルもまた夢を追い破れる姿がすばらしかった。
舞台装置、衣装がとにかく派手でうつくしい。パーティーシーンではセンターの大階段の向こうで本物のオーケストラが見える!まるく穴のあいたパネルが動き、その後ろでカーテンがしまる演出も独特でおもしろかったです。
そして歌もダンスもたっぷりでした。特に酒場でのダンスシーンはスーツ姿で踊るアンサンブルさんたちが大変かっこよくてジャニヲタ心がくすぐられました。PLAYZONEでやってほしい!(ない)


ここまで舞台を見た舞台好きのわたしの感想です。
そしてここからはグレートギャツビー原作及びフィッツジェラルドが大好きなわたしの感想を書いていきたいと思います。


個人的に感じたことが2点あります。

まずひとつめが原作の「信頼できない語り手」であるニックの目線の希薄さです。
ミュージカルなのでもちろんたくさん歌とダンスが入っていて、すばらしいと思います。グレートギャツビー。かわいい曲かっこいい曲たくさんありました。……でもなんとなく間延びした感じがあるんだよなあ、特に1幕。灰の谷に住む男たちの歌、マートルとその妹キャサリンの歌、酒場でウルフシャイムが歌う歌、それらは彼らの主観で彼ら自身のことが歌われる歌なんですね。
原作にももちろん「灰の谷」に生きる彼らはアメリカのひとつの側面、貧困と格差の象徴としと印象的に描かれてはいます。しかしそれもまた灰の谷の住人たちと同じく労働して生計を立てているニックの、貴族であるトムやデイジーに対するある種の反感によるものであるところが大きいとも言えます。
また、序盤にあるギャツビーの独白的なナンバー。回想としてはさまれる軍隊時代のギャツビーとデイジーのナンバー。これらギャツビーの思い出もまた語り手ニックの視点の外で語られてしまっている。(「とらわれのプリンセス」「とらわれのプリンス」なんかの歌詞自体はとても好きです)舞台ではそういうニックの視点を通さない部分が多い気がしました。
もちろん舞台を小説そのまま再現してほしいなんて言いません。(その点でいくとレオさまの華麗なるギャツビーは好き嫌いは別にしてとても原作に忠実だなと今思いました)だからこれはわたしが舞台を見ていて何となく「足りない」と感じたのがなんだったのかの考察に近いです笑。原作を知らないままこのグレートギャツビーというミュージカルのナンバーをもっと純粋に楽しみたかったな、、、

そして2点めがギャツビー自身から受ける印象です。わたしが原作でとても好きなシーンがいくつかあり、それがカットされているということが理由のひとつだと思っています。
ギャツビーがデイジーと再会するシーン、ひとの部屋を花でいっぱいにする、時計を取り落とす、そわそわしていてもたっえもいられずニックに弱音を吐く。物語終盤、デイジーにトムと愛し合った過去を否定するように迫る、そしてトムと言い合いになり「人を殺したような顔」をする。そしてここが一番うーんと感じたんですが、舞台のギャツビーはラストシーンでデイジーからの電話をあきらめているんですね。あきらめているというか、自分からデイジーを彼女の家へと送り出している。
ギャツビーという男は本当にあきらめが悪くて、力と金さえもてば「過去を取り戻す」ことすらできると信じています。そして、デイジーから電話がかかってきたと信じたまま死んでしまう。そんなことはありえないのに!実際デイジーはギャツビーの葬式にすら来てくれないのですから……。だから自らデイジーを送り出す井上芳雄さんのギャツビーのほうがよっぽどかっこいいんですけど笑。
また、ひとつめであげた「信頼できない語り手であるニックの視点の希薄さ」と合わせて考えるとこのギャツビーはとても実在性が高いと思います。舞台で具体的な過去回想として描写されるギャツビーの過去すら原作のニックにとっては伝聞であり真実のギャツビーは誰にもわからないんです。彼の父やにすら。
その点が舞台のギャツビーとの相違点かなと思いました。これもまた舞台を小説そのままにする必要はないので(以下略)


そして最後に。
ラストシーン対岸からのグリーンライトを背に受けながら歌うギャツビー。段々と夜は明け、明るくなった対岸を見つめ、客席に背を向けるギャツビー。その背中は何よりも凛々しく気高く、まさに「あなたひとりがあいつら全部ひっくるめたよりも価値がある!」と感じました。たとえ先に破滅しか待っていなくたって夢を決してあきらめない、過去に向かってひた走ることしかできないギャツビーのむなしくもうつくしい生き様!
井上芳雄さんは本当にすてきな俳優さんだと思います。