駆け込み訴え

ジャニヲタ腐女子の観劇メモ

関数ドミノ

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10月5日、関数ドミノに行ってきました。

観劇後ここまで暗い気持ちになったのはひさしぶり。前川さんの作品だから、と笑いにいくつもりでいたら終始胃がいたくて重苦しい気分で観劇後はぐったりでした。でもやっぱり設定ストーリー話の構成すべてがおもしろい。
演出、演技は全体的に暗く感じました。BGMもかなりおさえめ。照明はブラインドによって顔に影ができているところや、街灯のような斜め上からさすぼんやりとした光が印象的でした。
そして、舞台上には大破した車。

真壁を演じる瀬戸くんの演技が圧巻でした。神経質そうに自分の首や胸元、うでをかいているのがとても気持ち悪くて、同時に現実の人間の癖のように感じるくらいリアルでした。あの瀬戸くんのかわいらしい天使のような顔が真壁の卑屈さ、嫌らしさを映して醜く歪むのが本当にぞっとするほどおそろしい。
いらいらして周りに当たるところや、自分に感謝するよう言うところ、そういうところが本当に痛々しくて、見ていてつらいし厳しい。まるで自分が怒鳴られてるみたいに感じるような演技でした。
真壁のことは最後まで好きになれないのに、真壁という不安定なトロッコから観客は降りることはできない。劇中人物が何度も言及するようにまずは真壁を信じないとストーリーは展開していかないのです。そして何度も繰り返されるその言葉はラストの展開にもつながっている。
「ドミノ」の存在を証明したいと考えている真壁こそが「ドミノ」であり、その真壁の望みこそが現実ではありえない現象を起こしていた。真壁は自分に起こった不運すべてを「ドミノ」のせいにしている。真壁は自分の弱さから逃避し、ドミノ幻想(劇中で診断のつく症状)にとらわれている。しかし、自分こそがその「ドミノ」であり、真壁は自分にできたはずの望み、可能性すべてを自らのそのドミノ幻想によって打ち捨てていた。

ここの話の展開が本当におもしろい。

「ドミノ」を信じるからこそ真壁は奇跡を起こせるが、しかしそれは自分が「ドミノ」として望みを叶えるためでなく「ドミノ」という他者に自分の弱さを押し付けるためだった。だから「ドミノ」の力で傷つけた秋山を真壁は救えない。自分が「ドミノ」であるという現実を受け入れられない、「ドミノ」であるのに何もできなかった自分を受け入れられない真壁には何もできない。
劇中何度も繰り返される「他人の気持ちはあなたにはわからない」、いかにもその通りで森魚の望む通りに現実は動いているようですべては真壁の望む通りだった。森魚にとって田宮こそが本当の友達で別に泉のことは好きではなかったのかもしれない。劇中真壁は土呂の森魚への友情は「ドミノ」である森魚の力によるものではないかと言うが、それも本当の友情なのかもしれない。
そしてそれを全部ぶちこわす真壁。
劇中森魚の部屋に盗聴器をしかけ森魚を監視し、同時に無自覚とはいえ森魚の周りを自分の思うまま動かしている真壁は本当に悪趣味だけどまさに神様とも言えますね。

本当に重苦しく、つらい気持ちになる芝居でした。見てて疲れました……。
土呂を演じる山田悠介さんの演技はとてもかわいらしかったです。HIV患者であり切羽詰まってるはずなのにどこか抜けてて、でも途中森魚を神様のように信じ出すところはおそろしかった。狂信者こわいね。森魚が新興宗教の教祖みたいになってく展開とかもおもしろそう。
個人的に好きだったのは土呂が森魚の部屋に盗聴器をしかけるシーンと、田宮と森魚と泉の三角関係をデバガメするシーン。真壁と一緒に悪趣味な楽しみかたをしながら、その真壁を笑っている感じが楽しい。

それにしてもほんと瀬戸くんがすごい、っていう舞台でした。劇中人物も観客もみんなが真壁に乗せられ真壁を信じさせられることで進んでいくストーリーなんですが、その真壁を演じ芝居を引っ張りつづける瀬戸くんの力。瀬戸くんの演技がリアルすぎて真壁の人物像は決して好きになれるようなものではないのに最後まで目が離せない。瀬戸くんは今の若手俳優でも本当に力のある役者だと思います。
瀬戸くんの芝居もっと見たいな~。